「あれは、いつごろでしたか。九州各地のタウン誌が皆、このままではいけないと感じ、一斉に変わり始めた時期があるんです」
TJカゴシマ(タウン情報カゴシマ)編集統括、浜川ゆかりは、そう言って眼鏡に手を当てた。
タウン誌は、世の好不況に左右される。好景気で広告が多ければ、九州の各タウン誌が共同し温泉ガイド本を出版する。世の中のカネ回りが悪くなれば、各誌とも自分の雑誌を守るのに手いっぱい。おまけに、有料のタウン誌に対抗する無料誌(フリーペーパー)が次々に生まれる。
そこで、各タウン誌は姿形(すがたかたち)を変えていく。まるで、若い娘が黒いマスカラをマツゲにつけ、白いコンシーラーでニキビ跡を隠すみたいに。
「あるタウン誌はサイズをB5判からA4判にして、つまり大きくして写真やグラビアを増やしました。最初の読者層が年をとるのに合わせて、ターゲットを従来よりも高い年齢層に設定し直したタウン誌もあります。思いっきり内容を一新したところも……」
ひと呼吸の間。浜川の静かな声が続く。
「正直に言って、うらやましかった。こんなにも変われるんだって」
座って対話する浜川は視線を応接セットの真ん中に注ぐ。ソファとソファの間。飾り気のない木製テーブル。その上にTJが2冊。1980年に出された創刊号と今年6月の30周年記念号。隣には麦茶のコップが二つ。外側は、わずかに汗をかいている。
「TJがやったのは本のタイトルロゴを変えただけ。それだけです。大きさも創刊号と同じB5判のまま。でも、変わってしまえば今までの読者が離れてしまう。得るもの、失うもの……」
きっと、正解はない。白か黒か分からない。でも、30歳。TJは立派な大人になった。お祝いしよう。取材させていただいて、そう強く感じた。
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